忘れはしない時と唄

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【小説】1000文字小説 「連鎖」 

『掌編小説のススメ』第四弾!
ブロともの楓さん宅で再び開催です♪

お題は『冬』

今回は今までで一番、話が浮かばないという…(笑)
本当、全ジャンルの話を考えましたが、何故か一番暗い話に決めてしまう私は、もしかすると疲れているのかもしれない…orz
様々な捉え方で、お楽しみくださいませ。

そして読後はどうぞ、温かい飲み物を補給することをお勧めします^^;



 *

 信号待ちの二人ひかれ死傷 広島・T市
 五日午後八時ごろ、広島県T市の市道で信号待ちしていたF町、会社員、赤坂眞子さん(三十三)と、長男海斗くん(三)がトラックにひかれた。
 海斗くんは搬送先の病院で死亡、赤坂さんは肋骨を折るなど重傷。警視庁本所署は業務上過失致死の現行犯で、トラックを運転していた運転手、川崎礼二容疑者(三十四)を逮捕した。
 調べによると川崎容疑者は、中央分離帯の横断歩道に突っ込み、信号待ちをしていた赤坂さんと海斗くんをひいた。川崎容疑者は酒を飲んでいたという。

 身体の芯まで冷えるような、冷たい雨が雪へと変わった。
 闇の中ひっそりと佇む一軒の住宅から、歓喜の声が聞こえてきた。
 窓からこぼれるオレンジの明かりに、男のすすり泣く声が時折混じる。
 ようやっと、冬が終わる。私はかじかむ両手でリュックを背負い直す。ジッパーは、中の物がすぐにでも取り出せるよう開けている。
 濡れた道路を踏みしめ、百メートル先にあるその住宅を目指した。足取りに迷いなどない。
 門扉をくぐり呼び鈴に指を添えると、中から悪魔の声が聞こえた。私はリュックへと手を伸ばす。
 扉が開き。
 苦痛で歪んだ男の顔。女の悲鳴。玄関灯を反射し鈍く光る刃物。滴る赤に、空から舞い降りた雪が付着し、溶けた。

「私は息子の無念を晴らしたかった」
 無機質な狭い空間に男が二人。向かいに座る男は、眉間にしわを寄せたままこちらを伺い見ている。
「他人を殺しても、刑務所に入って刑期を終えれば元の生活に戻れるなんて、私は許せません。殺された海斗は戻って来ない。たった一人の家族だったんです」
 二人の男は無言で顔を見合わせる。向かいの男は大げさにため息を吐いた。
「川崎礼二は死亡しました」
「……そうですか」私は笑みをこぼした。海斗、ママはとうとう悪魔をやっつけたよ。

「死亡したのは二年前です。刑務所内で病気になり……赤坂さん、担当の者がその時伝えましたよね?」
「あの悪魔は私が殺したんです。今もこの手に感触が残ってるわ」
「違います。あなたが殺害したのは佐藤竜也で、今日刑期を終えたばかりの……」
「えぇ、今日刑務所から出てくることを調べていました。だから私、ずっと刑務所から後を追って……ああ、ようやっと海斗に会いに行ける。あの子もきっと、喜んでるわ」
「……こりゃ精神鑑定が必要だな」

 けたたましいフラッシュと人だかりの中に、「人殺し! 息子を返せ!」と泣き叫ぶ、私の顔が見えた気がした。



 完
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カテゴリ: 掌編小説(1000文字ショート)

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コメント

凄い、なぁ……

なんというか、もう、うん。
彼女が冬の中心になってしまったような。
えーと、かなりな自己解釈です!失礼しまっす!

赤坂さんの冬は、他の人を巻き込みながら終わる事無く続いていく、のですね。
雪の降る寒く暗い場所、やっと刑期を終えてきた彼は暖かいオレンジの明かりのつく家で、歓喜の声で迎えられて。
彼の冬は春へと辿り着いたのに。
赤坂さんの狂気が、彼と、その家で待っていた女性を冬へと引きずり戻した……。
もう一人の赤坂さんと同じ立場の人の生まれ。でもそれが、人違いで。
しかも赤坂さんを冬に落とした川崎は、もうすでに亡くなっていたなんて。

でも、母親である限り、自分の子供を殺された苦痛は精神を病むものとなりえる空虚ですよね。

赤坂さんの冬は、終わりが来るのか。
人違いで殺された彼を迎えた女性の冬は、いつか終わるのか。

もの凄く、考えさせられるお話でした。
「冬」の風物詩としてテーマになさらないところが、本当に凄い。
らんららさんもchachaさんも、本当に凄いなぁ……。

お疲れ様でした!


とりあえず、次の記事に行く前にホットミルクを作ってきます!

kazu osino #7av6LuR2 | URL【2011/12/15 17:47】edit

chachaさん、こんばんは(*´∀`*)ノ

このお話、辛いですね(グスン
あくまで、赤坂さんの精神を「正常だった」と解釈するならば、刑務所帰りの殺人者なら誰でもよかった、ということでしょうか。
失った息子への愛と、加害者への憎しみをどうしてもどうしても捨てられなくて、こうなってしまったと思うと、悲しすぎます(´;ω;`)ブワッ
kazu osino様のコメントにもありますけれど、目的を達した赤坂さんは、それでも幸せを取り戻すことのできない「冬」のままで、しかもさらに別の人を「冬」に巻き込んでしまったのですね。
深く、考えさせられたのです。

人の記憶の曖昧さってものは、こういう時に苦しみから逃れるためにこそあるんじゃないのか、と思いました。
逃避であるとしても、いっそ辛い記憶を失ってしまえばよかったのに‥‥なんて、ちょっと感情移入しすぎ?w

そしてそして。
雑記を拝見してきたのですが、chachaさんってすばるを狙っていたのですね?
うお~、頑張って下さい!
応援してますぞっ(´∀`)9

部屋は寒いけど熱くなってきましたっ。
私も頑張りますっ!

土屋マル #- | URL【2011/12/15 22:21】edit

>kasuさん♪

kazuさんの読みはいつも本当に素晴らしいのです。
そんな風に受け取ってくださったことが、何よりも書き手としては嬉しいことですよ~^^

冬は終わると彼女は言うけれど、結局この冬は明けることなく。
題名を「連鎖」にしたのは、人の繋がりと、誰かの手によって命を落とした人がいれば、必ず誰かが不幸になる、ということを表したく…。
うん、やっぱり暗いお話は説明も暗い気分となってしまいます^^;

他人を巻き込んだのは、少しひねりが欲しいなと思ったのです。
けれど、こうして見ると本当、ひどい有様になっちゃいましたね@@;
赤坂さん、そして名のない女性の方、こんな筆者で申し訳ないです(汗

さぁさ!
気分が落ち込んだところで、kazuさんのあま~い「冬」を読みたい私は、今からウズウズしております♪
楽しみにしていますね~!!^^
本当にありがとうございました☆

chacha #- | URL【2011/12/16 12:53】edit

連鎖って・・・!

わああ・・・っ
もう何と言いますか、chachaさんがサスペンスというジャンルも手がけておられるなんてっ・・・!衝撃的でした・・・!!
出だしから、もう何と言いますか、背筋がゾクッと・・・特に年末、自動車事故の悲しい報道が多い季節で。
最後の見慣れぬ佐藤という文字列にあれっ?と思って一度初めに戻って読み直したんですけれど、そこから先読んでああっ!そういうことか!!と・・・
例え刑期が終わろうとも、遺族の悲しみは決して癒えませんものね。そして復讐復讐がずっと続いていく連鎖。どこで断ち切ればよいのか、誰も何とも言えないところがまた、答えが出なくて悶々と連鎖は続いていくのでしょうかねぇ・・・重たい、そして深い内容でした。
さて、ココアでも飲んで書きますかな・・・

茉莉 #USanPCEI | URL【2011/12/17 00:02】edit

>マルさん♪

お返事遅くなりました><。
このお話を考えるにあたり、二日間ほど飲酒運転による死亡事故の記事、加害者、被害者のHPや、刑期について調べていました。
本当、辛く悲しい事故ですよね。軽い気持ちで飲酒をして事故を起こしてしまう…どちらも(中には被害者に対して会おうともしない加害者もいましたが)永遠に消えることのない傷を負っています。

被害者側でお話を書きましたが、加害者側でも考えていました。それだと、色々と幅が狭くなってしまったのでやめましたが…

おそらく。私の見解では…
赤坂さん、加害者である川崎が死んだことを認めたくなかったんでしょう。どうしても、自分の手で裁きたかった。けれど、それが叶わなくなった。いや、そもそも本当に死んだのか?今、刑務所から出てきた奴が本人じゃないのか?そうだ、川崎だ。あの悪魔…
と、いう描写も実のところ入れたかったのですが。
うん、このお話は掌編には不向きだったように思います(汗)場面も二転、三転しますし^^;

人の記憶の曖昧さは、こういう時にこそ発揮して欲しいものですね。誰もが乗り切れる強さを持っているわけではないですし…;;

あ、そうなんです!すばるなんです^^
やっぱり、審査員に宮部さんがいるし…比較的挑戦しやすいと聞きまして…(レベルは高いんでしょうけれど@@;
がんばりますです!
マルさんも短編がんばってくださいね~!^^

chacha #- | URL【2011/12/17 08:01】edit

>茉莉さん♪

むふふ…サスペンスだなんて、私自身も初ジャンルです(笑)
ちゃんと描けていたかなぁ~と心配しつつ、皆さまの反応を読んで、ちょっとだけホッとしておりますです^^

そう、このお話。冬=年末年始ということで絡めてみました。飲酒運転による事故、本当に増えますからね@@;
抑制のためにも、どこかで広めてみようかしら(笑)

でで。そうなんです。実は赤坂さん、加害者であった川崎を殺害するつもりが、別人を手にかけてしまうという…
警察はちゃんと、川崎が死亡したことを告げたと言っておりますが、赤坂さんは聞く耳持たず。
マルさんのコメ返信にも書きましたが、おそらく彼女はその事実を受け入れたくなかったのだと思います。
そしてまた、罪のない被害者が増えていくという…

うん、やっぱり暗く辛いお話になっちゃって、なんだか私もしょんぼりしてきました@@;
飲んだら飲むな!
飲むなら乗るな!
ですね^^

ありがとうございました。ココアでほっこりしてください(笑)
茉莉さんの作品も楽しみにしています~!初だから本当、今からウキウキ♪^^

chacha #- | URL【2011/12/17 08:17】edit

お昼でよかった!

夜中一人で読んでいたら凍りつきそうです!
お昼でよかった!

心の冬。
どうしようもない、終わりのない冬なんですね…。
赤坂さんも終わらせたいと願い、願うあまり違う方向に。(以下皆さんのコメントに同感です~)
そして。
最後の一行。
自分が息子を殺した男と同じ位置にいる、その自覚も良心も、彼女のどこかに残っているような気がします。
それこそ、彼女には永遠に春が来ない気がする…。
chachaさん、ほんとに様々なジャンルを描き切りますね!すごいなぁ~♪
とても1000文字、なんていう枠があるなんて、感じられない、奥深さがあります。

ああ、kazuさんのラブラブなあったか1000文字で温まりたい~♪

らんらら #- | URL【2011/12/20 12:25】edit

>らんららさん♪

このお話、本当救いがないといいますか…
バッドエンドも書いてみたいと思ったのです。
でも私自身、小説を読むならハッピーエンドが好ましいけれど^^;

らんららさんのお話を読んで、なるほど!こういった冬もあるのかと唸りまして。
私もちょっとひねって書いてみました^^
でもでも。冬ってやっぱりこう、寒い時期だからこそ温まるものが読みたいんですけど…
うん。kazuさんに期待っ♪(笑)

最後の一行。本当に悩みました。
らんららさんの作品も、最後の一行がとても効いていたので。
「私」と「女」とでかなり悩みましたし、そもそもこの一行はいるのかいらないのかでも悩みました。
まさしく、らんららさんがおっしゃってるようなニュアンスを含めましたので、おぉ!と驚いております(笑)
ありがとうございます^^冥利に尽きます♪

1000文字ショートって本当、練習になりますね~^^
ささ♪
次は誰のかな~??楽しみですねっ♪

chacha #- | URL【2011/12/21 12:51】edit

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# | 【2011/12/22 10:58】edit

>秘密さん♪

うう~ん??何故でしょう??@@;
こちらの隠しコメントのみしか届いておらず…なのです;;
もしよろしかったら、再度コメントお願い出来ますか?(切実
何が引っかかるのだろう…気になる…FC2さんよ…orz

chacha #- | URL【2011/12/22 12:36】edit

こんばんは。

こんな夜中によんじゃったベンベン(をい
あのね、昔見た「世にも奇妙な物語」にあった雪山の話を思い出しました。
狂気とリアルの狭間、彼女にとっていまここにあることは現実であって現実じゃないんでしょうね。だって、最愛の子供がいないんですから。
とても正気じゃいられないです。
自分の子供の命が目の前で奪われる。故意でなくとも、もう戻らない、その現実は変えられない。
考えただけでぞっとします。

最後の一行が、彼女の氷のような冬の深さを物語っているようです。
こういうの、ぜんぜんありだと思うのです。
いいです!

楓 #u2lyCPR2 | URL【2011/12/24 01:18】edit

>楓さん♪

すーんごくお返事が遅くなってしまいました;;
お忙しい中ありがとうございます☆

夜中に読んじゃいましたか…にやり。←
でもでも、これはホラーとかではないですしね。全くもって、現実にあり得る話じゃないのかな、とか思いつつ…極端ではありますけれど。

楓さんがおっしゃったお話、おそらく見たことがないのでググッてみました(笑)
なんだか…恐ろしい雰囲気満々で@@;
でも見てみたい。気になる設定です。うん。

彼女の現実はおそらく、息子の死と共に止まってしまっているんでしょうね。もしくは、終わってしまったのか。
ちらとしか描けませんでしたが、彼女はシングルマザーでもありまして…
色んな事故に目を通していたところ、やはり家族がいるからこそ頑張っている方ばかりでしたから。
支えてくれる人が居ない。だから彼女は悲しみから抜け出せないままこのような結末に…

本当、彼女には悪いことをしてしまいました。巻きこんでしまった他の女性にも申し訳ないのです。
やっぱり、書くのも読むのもハッピーエンドがいいなぁ。(しみじみ

最後の一行、らんららさんの返信でも書きましたが本当、悩みました。
だからそう言っていただけることが何より嬉しいのです^^
ありがとうございました☆
楓さんの作品も楽しみにしていまっす♪

chacha #- | URL【2011/12/28 12:35】edit

こんばんわ。
少し間を空けての投稿です。

前に書いた感想忘れちゃいました(笑)

内容はみなさんのコメントと似たりよったりなので割愛させて下さい。

私が思ったのはすごく悲しいお話だということ。
世界を認識できなくなってしまうほどの悲しみに見舞われて、心を壊してしまった哀しい人のお話。

他に言葉が思いつかないので申し訳ない。

恋町小路 #4vTGfxN. | URL【2011/12/29 01:05】edit

>恋町小路さん♪

こんにちわ^^
返信が年をまたいでしまいました。すみません;;

本当、このお話は救いがなかったといいますか…
私も他の方への返信で色々と書きましたので割愛しますが(笑)
やっぱり、明るく、前向きなお話の方が読後感気持ちよくなれるものですから^^;
またそういったお話を書いてゆきたいと思いました、皆さんの反応を見て(笑)

わざわざ何度もコメントをいただきましてありがとうございました^^
お手数おかけしまして、申し訳ありません><

chacha #- | URL【2012/01/02 13:25】edit

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