忘れはしない時と唄

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【小説】1000文字小説 「私は嘘が嫌いだ」 

『掌編小説のススメ』第二弾!
ブロともの楓さん宅で再び開催されました♪早速参加です^^

お題は『嘘』

1000文字という制限は、何度やっても本当に難しいのです~@@;
参加は自由ということですので、皆さんもご一緒にどうですか?♪


 *


 私は嘘が嫌いだ。
 私の父も、祖父も、曾祖父もそうであった。だから私も一人の息子を持つ父として、同じようにそれを継いでいる。

 目の前のベッドに寝そべる息子は、小児がんという病に侵されている。急性リンパ性白血病だ。発症は三歳の時で、闘病生活はすでに五年。その間三度の再発を起こし、とうとう骨髄移植まで施した。
 手術から二週間が過ぎた今、彼は酸素マスクが外れぬまま辛そうに眠り続けている。

 まだ会話の出来る時、ふいに息子が私に訊ねてきた。
「お父さん、死ぬって苦しい?」
「苦しいだろうな」
「死ぬって、怖いこと?」
「怖いだろうな」
 その会話を聞いていた妻が、血相変えて私を怒鳴りつけてきた。泣き喚きながら、あんたには血が流れていないのかと言われる始末。
 私は嘘が嫌いなだけなのだ。まやかしの嘘など、つかない方がマシである。
 息子はそれ以後、私と会話をしなかった。いや、出来なかった。私の仕事が繁忙期を迎えたためだ。冷たい親と非難されようとも、息子の治療費は稼がなければならない。

 そうして今。
 窓から見える景色はすっかり秋模様に変わり。空には満月。時刻は午後十時半。
 夕方近くから血圧が低下し続ける息子の傍で、私はこのまま二度と目が覚めないのではと覚悟を決めた。妻も私の隣りで涙を浮かべたまま、じっと息子の寝顔を見つめている。

 すると唐突に。息子が目を覚ました。薬で眠らされているはずの息子が。口が小さく動いている。何かを言っている。
 いつぶりだろうか。息子の開いた目を見るのは。ここずっと、眠っている顔しか見たことがなかった。こんなにも息子は、可愛い顔をしていたのだろうか。

 私は、嘘が嫌いだ。
 だから私は、真実だけを息子に伝えていく。
 それは息子も重々承知の上だろうから。

「真一、私はおまえを愛している」
 息子はゆっくりと、一度瞬きをした。
「私は、おまえの父親で本当に幸せだ」
「しんどいだろう、今はゆっくり眠りなさい」
 息子が微笑んだように見え、その直後、容体が急変。

 心臓が止まり。
 急いで心肺蘇生が行われたが、一度も息を吹き返すことがなかった。

 息子は最後の最後まで頑張り、私の言葉をちゃんと聞いてくれた。
 日頃から嘘をつかない私のことを、疎ましくも思っていたはずだろう。だが、一番大事な時に、それは最大限に効果を発揮すると私は信じたい。

 息子は微笑んだまま、天国へと旅立っていった。



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カテゴリ: 掌編小説(1000文字ショート)

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コメント

こんばんは~^^

楓さんの所で掌編小説を投稿されたのを聞いて(見て?)、いそいそとやってまいりました^^

とても、背筋の伸びるお話でした。
継いでいる「嘘が嫌い」という、彼にとっての真。
嘘を口にしないことで、辛い事も嫌な事もあったと思う。
それでも嘘を口にしない。
嘘を伝えたい時も、あったと思う。
けれど、嘘は口にしない。
苦しくても、辛くても。
その想いが、一番大事な時に「真実」だと無条件で受け入れられる、「自分の言葉」となり得るのだから。

変なコメでごめんなさいですっ
なんだか凄く、お父さんに感情移入してしまいました><
とてもとても、胸がぎゅっとするお話でした。
感動しました!

kazu osino #7av6LuR2 | URL【2011/08/23 21:51】edit

こんにちは!

強い。
それが第一印象でした。
嘘が嫌い、という前提を貫くのはとても大変なことだもの。
貫き通すことで、誤解を受けたり、誰かを傷つけたり、同時に自分もつらいはず。
そこまでして、と思わせておいて、最後にその「嘘が嫌い」であるがゆえに素直な愛情を伝えて終わる展開。
さすがです。
考えさせられる、面白い題材でした(^^)

あとちょっと、息子のために嘘をつきたくなる、でも嘘は嫌い、という葛藤が垣間見えたなら。もっと、お父さんの気持ちに寄り添えるのかな、と思います。
ああ~、素敵な作品を見てしまったから!!むんっと、気合を入れてがんばらなきゃ。

ありがとうございます!!

らんらら #- | URL【2011/08/24 12:40】edit

>kazuさん♪

えへへ。一番乗りです(笑)
お題を考える=話が浮かんでいるということで。すみません、なんだかやっぱりズルしちゃった感じですが^^;

kazuさんの真摯な言葉、とても心に響きました。
そして、短い中でちゃんと全てを汲み取っていただけたこと、本当に嬉しく思います^^

嘘をつかないというのは、生きていく中でとても難しいことで。
だから、嘘を全くつかない人はそうそう居ないと思います。
それでも彼は、嘘をつかない人間で。
それはとても信頼を得る行動だと、私は思うのです。融通は利きませんが@@;

>一番大事な時に「真実」だと無条件で受け入れられる
これがこの作品にとって一番のテーマでした^^

少し重い作品になってしまいました。すみません><。
kazuさんの「嘘」も楽しみにしております~!

chacha #- | URL【2011/08/24 12:47】edit

>らんららさん♪

こんにちわ^^
早速のご訪問、ありがとうございます☆

そしてそして。
らんららさんの言葉に、なるほど!と強く思ったのは「葛藤」。
確かに、親というのはどんな状況であれ、子供のことを最優先に考えるものですから…
葛藤がないというのは不自然です。いたたた。かなりの凡ミス!><
冷たい人間過ぎますよね、このままでは@@;
ありがたいアドバイスをありがとうございました!^^
うん、やっぱり勉強になります♪掌握小説、楽しいですね~☆

らんららさんの作品も楽しみにしています~♪
ありがとうございました^^

chacha #- | URL【2011/08/24 12:53】edit

おお、重深い!

前作と打って変わって。
さすがchachaさん、引き出しが多いですね!
僕もらんららさん同様、最初このお父さんをすごく冷たい、というか融通の利かない人なんだろうかと思いました。同時に、信念の人だとも。
葛藤と言えば確かにそう。でも、読み進める内に、

私は、嘘が嫌いだ。
だから私は、真実だけを息子に伝えていく。
それは息子も重々承知の上だろうから。

この三行に、そこはかとなくその葛藤が垣間見えるような気がしました。単に次の展開への間を取るための枕じゃなくて、じっくり噛んで飲み込むような、まるで自分に言い聞かせているような、彼なりの葛藤。そんな風にも読めたんです。

最期、子供さんが父に何を言いたかったのか、何と言って欲しかったのか、それを想像させるこの絶妙な引き際が憎いです。息子に抱きつき、白い壁にくずおれる家族の姿が目に浮かびます。辛いです。

なぜ父親がそこまで頑なに嘘を嫌うのか。
単に家訓だから、では説明できない何かがあるんでしょうか。

ところで、「しんどそうに眠り続けている」って、文語として使うときはどうですかね?苦しそうにとか辛そうにとかかな?と思ったりもしたのですが、どでしょ?もちろん、ぜんぜん普通に使っていいのかも知れません。その時はご容赦をー!(汗

楓 #u2lyCPR2 | URL【2011/08/24 21:31】edit

>楓さん♪

こんばんわです^^体調は大丈夫ですかー!?@@;
ゆっくりでいいので、楓さん。体調を万全にして再開してくださいね!
…と言った矢先、先ほどそちらをちら見してみると更新しているし!(笑)
えっと。読みに行きます♪ ←

今回の話、やっぱり重いですよねー><
ちょっとどよ~んとしちゃうので、らんららさんの作品で甘酸っぱい嘘を味わって欲しいです☆

でで!
確かに、確かに。読み直してみると、そこだけ変に浮いてますね@@;
しんどそうに、と使ってしまった理由としまして。最期に父親が息子に対して「しんどいだろう」と言葉をかけるシーンがあるためだったのですが。
うーん、やっぱり地の文と会話文は別物として考えるべきでした^^;
うわー!気になり出したら止まらないっ!書き直したいっ!(笑)
でも、そういった欠点もそのままにしておかなければ、今後のためになりませんので…あえてこのままで!

やっぱり短くても見落としがありますね。特に私はささっと書いてしまうクセがあるのでいけません><
ご指摘、ありがとうございました☆
あと、楓さんなりに感じられた彼流の「葛藤」。嬉しかったです^^

chacha #- | URL【2011/08/24 22:07】edit

ども

口語として使う分にはなんら違和感ないのですが、文語として用いると少し「ん?」てね。笑

らんららさんのところは意味不明に叫んで去りましたwww

更新すみまてん。
野いちごにまだ少しだけストックがあるので、更新楽なんですよ。なので、リハビリがてら。でも、結構推敲に時間係りました。いけませんね。途中で「掌編かけよ自分」と思いましたわ。

いまから帰ります←まだ会社

あ、そうだ。そうそう。
後で気付いたこと、いただいた感想を基に、もう一度推敲するって作業はとても大事だと思うので、公開されないにしても、一度は筆を入れられることを僕はオススメします♪

では!

楓 #u2lyCPR2 | URL【2011/08/24 22:24】edit

No title

おお~~~秀逸な小説ですね。
嘘をテーマにした真実のお話ですね。
真実に立ち向かう強さと嘘のやさしさが込められた話で感動しましたね。
字数制限のある中のすごい小説です。

LandM #19fPlKYU | URL【2011/08/25 07:06】edit

>楓さん♪

わかります。文章に変えると何か違和感を抱くものってありますよね。これがその例だっ!(笑)
じゃあ、お言葉に甘えて素直に修正かけておこうかな…こそこそ
妙にそこが気になってしまうので^^;

らんららさんのところで…叫んでましたね~(にやり
女性はああいった確信犯的な行動をもすることがありますよー♪
やっぱり、男性よりは一枚上手なのか?(笑)
いえいえ。女性の勘も鋭いとよく言われますし、男性は純粋なのでわかりやすいのだと…(笑)
可愛いと思うのです、世の男性方は^^特に息子が産まれてからはよく思ったり。

遅くまでお仕事お疲れ様でした^^
いつも良きアドバイスをありがとうございます♪とっても為になってます~!

chacha #- | URL【2011/08/25 12:11】edit

>LandMさん♪

こんにちわ~^^
読んでくださって嬉しい限りです☆ありがとうございます♪

珍しく、こういった重い作品を書かせていただきましたが…
やっぱり書いている側も気持ちが落ち込んでしまいますね^^;
それでも、これは書いてみたくて。

嘘が嫌い。嘘をつかないと貫き通す姿勢には、彼なりの持論があるのでしょう。
ここぞという時の一言に、最大限の重みを与えるためかもしれません。
なかなか出来ませんよね、この行動は。面倒くさい人間だと思われるのがオチですし@@;

いやいや、本当に有り難いお言葉をありがとうございます!
幸せいっぱいです♪^^(笑)

chacha #- | URL【2011/08/25 12:17】edit

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