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忘れはしない時と唄

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【小説】夢術師の夢 第二章 集会 

6



 イドの告別式は厳かに執り行われた。
 まずは白い法衣をまとった人物が一人祭壇へ歩み出て、イドへの手向けの言葉を呈し。イドが生前どういった人物であったのかを述べる。
「イド・リックは私たちにとって特別な人でした。私たちは皆、寂しい思いをすることになるでしょう」
 朗々と語り続ける司祭(だとラカルに教えてもらった)の言葉に、参列者たちは皆すすり泣く。その度に、イノは目の奥がじんと痺れ、鼻がツンと痛んだ。

 イノはキャナたちと同様、黒い布を服の上から巻きつけている。喪衣なのだと、ラカルがイノの肩にかけながら教えてくれた。
 見渡せばなるほど、司祭以外は皆黒い服、またはイノのような喪衣を身に着けている。
 一番後ろから見たその光景は、イノの目に、胸に、深く焼きついて消えることはなかった。

 司祭が祈願を読み上げ、歌を歌い、黙祷を捧げ。告別式は閉会した。

「あなたがイド・リックの孫娘ですかな?」
 ラカルとリンロットと共に、イノがぱらぱらと帰っていく者たちを扉近くで見送っていると。イドとさして歳の変わらない老人が、人ビトの合間を縫って歩み寄ってきた。
 胸まで伸びた白いひげを手で撫でつけながら、その老人は優しい色を帯びた瞳でイノを見つめてくる。
「バーム・キキ長だ。夢術団の長を務めている」
「バームでいい。長は余計じゃ」
 ラカルの言葉に、バームはちろりと視線をよこして釘を刺す。
「よくぞこの遠い異国の地まで、足を運んでくださいましたな。長旅であったじゃろう?」
 微笑むと、目じりのしわがますます深くなる。そういうところも、イドじいちゃんにそっくりだ。
 思い出すと、また目頭が熱くなる。
 イノはぶんぶんと首を横に振り、「そうでもありません。大丈夫です」と笑顔で受け答えた。
 バームはほんの少しだけ思案するような素振りを見せ、ひげをゆったりと撫で付ける。
 そうして、おもむろに辺りを見渡し両手をぱんぱんと打ち鳴らした。
「皆の者、遠方からイド・リックの孫娘が来ておられる。イドの唯一の身内じゃ。話をしたい者も多いじゃろう。ここは一晩我らのために扉が開かれておる。時間の許す限り、悲しみを分かち合おうではないか」

 静かだった聖堂内が、にわかにざわめき出した。
 イノは突然、自分が彼等の注目の的になってしまったことが恥ずかしく。いてもたっていられなくて、ラカルとリンロットに視線を投げる。
 リンロットは優しく微笑み返してくれたが、ラカルはいつも通り、ふんと鼻息ひとつ吐いて視線をそらす。
 何か言ってくれてもいいだろうに、相変わらずそっけないんだから。

 窓の外はすっかり暗くなり、聖堂内もところどころに闇を抱き始めた。
 蝋燭(しょくだい)に立てられたロウソクの炎がゆらりと揺れ、影が自我を持って踊り出す。
 時折出入りする者が扉を開けると、外からは闇夜の吐き出す冷気が流れ込んでくる。
 イノはぶるりと身震いした。

 気がつけば、自然とイノを中心に輪が出来上がり、多くの人ビトがお悔やみの言葉を口々に放ってくる。
 お気の毒です。寂しくなります。さぞかし、お辛いことでしょう。
 皆悲しみを帯びた瞳で、中には涙に濡れた瞳でイノを見つめてくる。
 イノはその度に首をふりふり。頭を下げて応対した。そのうち首が落っこちてしまうんじゃないかと心配になるほどだった。
 ある程度落ち着いてくると、人数も少しずつ減ってきた。それでも、参列した半分ほどはまだ聖堂内に腰を下ろしている。
 よくよく見渡せば、ラカルたちのような若者は少なく感じられた。
 女性よりも男性の割合が高いが、半分強といったぐらいで。
 体格も様々。中にはアモーガスのような《キーマ(元人)》も見られ、アモーガスとはまた違った種類のキーマも発見した。鳥の頭をしているのだ。
「こっちだ」
 ラカルの言葉に振り返ると、二人の男性と一人の女性が立っていた。
 背が高く筋骨隆々な男性と、小柄で少し丸みを帯びた体つきの男性。獣のキーマで、細身な女性。
 ラカルが引っ張ってきたのだろう。なにやら彼らの間で簡単な会話を交わした後、三人はイノに向かってにこりと微笑んできた。
「おまえの望みを叶えるだろう、人物を連れて来た。試してもらうか?」
 ラカルの言葉に、え、とイノは声を漏らした。試してもらうって、ここで?
「お力になれるかわかりませんが、今晩、イノ殿の宿にお供してもよろしいですか?」
 そう言って、キーマの女性が柔らかく微笑んできた。ああ、宿で私が眠っている間にということか。変な汗かいちゃった。
「是非、お願いしま――」と言いつつイノが彼女に頭を下げると同時に。
「ダメダメ! イドが指名したのはラカルでしょん?」
 人垣の向こうから、ひときわ高い声が飛んできた。この声、この口調。キャナだとすぐにわかった。
 その瞬間から、また辺りがざわりと唸った。
 イドが。イドはラカルを? 知らないのか? そんな言葉が途切れ途切れ聞こえてくる。
 隣りに立つラカルをそっと覗き込むと、じろりと人垣の向こうを睨んでいるようで。
 イノの背丈では見えないけれど、おそらくキャナを睨んでいるのだろう。ラカルさん、その顔はちょっぴり怖いですよ。
 目の前に立つ三人が、キャナの言葉を受けて明らかに動揺し始める。
「ラカル殿も人が悪い」と、小柄の男性が額の汗を拭う。
「イドのご指名とあらば、ラカル。おまえがやらねばならんだろう?」と、ムキムキの男性がじろりと睨む。
「イノ殿……」
 そんななすりつけ合いの中、ラカルの視線を避けるような囁き声で、キーマの女性が腰を折ってイノの耳元に近づいた。
「お力になりたかったのですが、イドは何らかの思いがあってラカル殿を指名したのでしょう。その気持ちを、私たちは無下にしたくはありません」
 それでは、失礼します。と、こちらの言い分も聞かぬままにそう三人は頭を下げて、そそくさとその場を去っていってしまった。
 イノは改めて、イドがどれほどの影響力を持つ人物だったのか。そしてキャナがどれほど無遠慮な性格なのかを思い知った。
 きっとアモーガスがまた睨みをきかしているだろう。
「あいつ……」
 苦々しく呟くラカルを見て、イノがこっそりため息をこぼした瞬間。
 聖堂の扉が大きく開かれ、びゅうと強い風が吹き込んできた。そうして、怒声。
「何だおまえたちは! ここで何をやっている!」
 金銀の装飾が施された法衣をまとった人物が、顔を真っ赤にして仁王立ちしていた。



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カテゴリ: 長編

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コメント

No title

ラカルさんは優しいですよね
基本的に不器用だとも思えますが(ーωー

やはりキャナもアモーガスも
何か訳ありのようですね
イドさんの指名があることを
他の人々は知らないようなので


それにしても、夢術師というのは
実はよく思われていない異端の存在なのかな?って
最後のシーンで少し考えてみました(・ω・`

ほら、物語の最初の辺りで
ある承認さんが「薬を使えばいい」という
趣旨の発言があったので

sun #iBQcsk6M | URL【2011/08/04 11:46】edit

おっと

カラルの目論見、キャナに看破されちゃいましたね。
イドが彼を指名したのには、きっとまだ伏せられている彼の過去と関係があるのでしょうか。

色んなキーマが登場しますね。
この世界に生きる種族の多様性に気付かされます。

そして登場した何やら偉そげな人物。
身なりからして高位の地位にある人物と見受けますが、さてさて、それまたこの世界にあって夢術師と相対する者のご様子。
<パバル>でしたっけ。
冒頭に出てきた不思議な品物のことを思い出しました。
続き、待ってます♪

楓 #u2lyCPR2 | URL【2011/08/04 12:48】edit

>sunさん♪

いつもコメント、本当にありがとうございます~;;
もう本当に。何を差し上げたらよろしいのかわからないほど感謝しております!><。
なかなか伺えずすみませんです…

ラカル。不器用ですから(どこかでよく聞くセリフ。笑
根はきっとね。優しいんです。でも…色々とあったようで…
今はまだ。お答え出来ないですが、きっと彼自身が話してくれることでしょう(キャラに投げる。笑)

そうそう。イドに名指しされていること、イノとラカル自身と、イノが教えたリンロットと。おそらくキャナ辺り(リンロットが喋った?)が知っているだけで、他は知りません^^
ここでみんなにバレちゃったけれど(笑)
知られたくなかったんでしょうね、ラカルは。可哀相に。←

うふふ。やっぱりsunさんは色々と考えるところが鋭いですが^^
ここ、第二章でその辺りを明かしてゆきます♪
またよければ、お付き合いください☆

いつもありがとうございます!^^

chacha #- | URL【2011/08/05 09:50】edit

>楓さん♪

楓さん!色々とちょっとずつ惜しい!(笑)
ラカルです、ラカル~!^^
そして、バパル。でも、ちらっとしかまだ出てきていないのに、覚えていてくださって嬉しい♪のです^^

そう、ラカルの目論見、見事打ち砕かれました…
おそるべしキャナ。アモーガス、さては目を離したな?@@;
彼女はですね。きっとB型さんなので…こういう行動はしょっちゅうです。お気をつけください(笑)

キーマ。色々と出てきますが、あんまり多く出演させると頭こんがらがるので(私が。笑
キーマンになる人のみに留めておきます^^;キーマだけに…(この一言がいらない

この世界。対立しあうものが、最低でも二つは存在しているのですが…
あまり秘密を引っ張り過ぎると物語が進みませんので^^;この章で明らかにしてゆきます♪でも、そのタイミングが本当に難しい…
楓さん、教えてくださいっ!←

こうやって読んでくださる方がいること、本当に活力になりますね^^
いつもありがとうございます♪

chacha #- | URL【2011/08/05 10:04】edit

あう

がびーん!

×カラル→○ラカル
×パバル→○バパル

バパルはさておき(え)、ラカルを間違うとか失礼極まりないですね。
すみません!!

冒険物語でよくファイを間違われました。なぜか皆さんフェイって呼ぶんです。何でだろ?なんて首を傾げたものですが、まさかその僕がやっちまうとは……ごめんラカル。今まで君は僕の中でカラルだったんだ。滝汗

パバル……じゃない、バパルはですね、テンテンとマルの見分けって実はちょっと良く目を凝らさないとあぐはっ(>_<。)

楓 #u2lyCPR2 | URL【2011/08/05 10:47】edit

>楓さん♪

いえいえ!私もしょちゅうやらかします(笑)
最近ではらんららさんのところでロトロアの名前を間違えてました^^;
でも。まだまだ序盤ですし♪いいのです~!
ほんのちょっとだけ。最後にネタばらしすれば良かったかな、ふへへ。なんて思ったのは秘密ですが(笑)

ファイのこと、フェイって。私、言ってたかもしれない!(←自信がない奴
もしそうだったらごめんなさいです~><。
勘違いってなかなか気付きにくいですもんね~

そうそう。テンテンとマル。特にPCだと見づらいといいますか…
私もよくPCに目を近づけて確認したりしてます(笑)
音声付ならわかりやすいんですがね~(どんだけラクしようとしてるんだ

chacha #- | URL【2011/08/05 12:38】edit

No title

chachaさん、こんばんは(*´∀`*)ノ

ううむ、色々、何か沢山、起こりそうな予感っ。

私のただの予測なのですが、バパルという、悪夢を制御する薬(?)の流通を支配する組織のようなものがあって、バパルが世に台頭するにつれ、彼らの陰謀により夢術師は忌避される存在になっていった‥‥みたいな流れかなあ、とか|ω・`)
全然違う? 失礼しましたwwwo(*・∀・)つ☆(.;.;)3`)アブッ

文末に漂う独特の雰囲気(ライトノベルと硬い文学的作品の、いいとこ取りの丁度よい中間点のようなテイスト)が、とっても素敵です(ノ´∀`*)
これは真似したくても出来ない、やっぱりchachaさんのセンスかなあ、と思うとちょっと(嘘です。本当はかなりwww)悔しい(´・ω・`)ショボン

続きも、楽しみにしております(*´ω`*)

土屋マル #- | URL【2011/08/05 22:10】edit

>土屋マルさん♪

こんにちわ☆いつも更新追っかけてくださり、本当にありがとうございます;;

むふふ。不穏な空気が漂いそうです…
そうそう、色々とあるんですが。私、説明するのが本当に下手で下手で><
大丈夫かな。読み手の方にちゃんと伝わるかな。と、とっても心配しております@@;
そういうところ、マルさんの作品は私にとってとても参考になるんです。ちゃんと読み手がわかるように、世界観が伝わるように書いてらっしゃるもの^^羨ましい~!見習わなきゃ~!

マルさんの想像力にもオドロキです。
うーん。今は言えないですが、的外れなことを言っているわけではない、とだけお伝えしておきます(笑)
さて。早く色んな秘密暴露していかなきゃ!^^
秘密が物語りの目的じゃないんだもの~♪

いつも嬉しいお言葉を本当にありがとうございますです♪がんばるぞー!^^

chacha #- | URL【2011/08/07 16:00】edit

いや~んっ!

ラカルさま素敵ーーーっ!!
欲しい、ちょっ、お、お持ち帰りしていいですか?←殴
一気にここまできちゃいました^^
そしてラカルさまに落ちました(笑
要にのし付けてお中元的にお送りしますので、ラカルさまをください!

ワクワクする物語設定に、とても魅力的な登場人物の皆さん。
いやもう、がっつり続きが気になります。
最後に出てきたなんだか偉そうな物言いの法衣の人、嫌な感じですね。
でも何かあっても、イノちゃんにはラカルさまがいるからっ♪
さり気に、けどリンロットさん達にはばればれに、イノちゃんを守っちゃうんだろうなぁ。

キャナさんの性格も、kazu的好き。
そういう人がいるからこそ、物語が楽しいというか、現実も楽しいというか。
ラカルさまにとっては、ちっ、て感じだったでしょうが(笑

続き、楽しみに待ってます^^

kazu osino #7av6LuR2 | URL【2011/08/08 10:28】edit

>kazuさん♪

うひゃー!びびびっくり@@;
kazuさん、追いついたーー!(笑)
嬉しい驚きです^^ありがとうございます~♪

ラカルに様が付いてる!なんてこと!ラカルには勿体ない!(笑)
どうぞどうぞ、もうタダで贈らせていただきますよ~^^ ←
あ、でも要くんは欲しいなぁ…
じゃ。交換という方向で話を進めていきましょうか!(こらこら

しっかりと説明のないままに話を進めるという、かなり強引な物語となってしまいましたが^^;
いずれキャラたちが勝手にしゃべるだろうと踏んでおります(なんて人任せな
最後に出てきた人。嫌~な奴ですよ。ふへへ。 ←
楓さんのとこの西院社長みたく、みんなからとことん嫌われるようにがんばらなきゃ!(え

ラカルは気遣い上手ですが、なんせ不器用そうなので(笑)
そこんとこ、イノがしっかりしてくれたらと願っております(他人事発言
キャナも好きと言ってくれて嬉しい~のです♪彼女、私も結構嫌いじゃなかったり☆
本当にありがとうございました~^^

chacha #- | URL【2011/08/09 12:28】edit

あれ⁈

追いついちゃった?!(◎_◎;)
もっと読みたいです~!

皆様のコメントも一緒に楽しませていただきました(⌒▽⌒)
ふむふむ、なるほど、なんて読んで行く内に、
ラカルに落ち着きました、に爆笑(^∇^)
kazuさんらしくて(笑)

さて、ラカルの企みはあっさり水泡に。
じいちゃんのオススメの人。この言い方がすごく好きです(^◇^)
じいちゃんはラカルとイノを任せたかったんですものね。
大変なのかもしれないけれど、頑張れ、ラカル~♪

金色の法衣…嫌なやつなのですね、
イノちゃんを庇うラカルを妄想しつつ、楽しみにしています( ´ ▽ ` )ノ

らんらら #- | URL【2011/08/13 13:19】edit

>らんららさん☆

前以上にのんびりペースなものですから…あっという間でした??@@; ごめんなさいです!
そうそう、kazuさんは最終的にラカルに落ちてくれたようで(笑)
ラカルもさぞかし嬉しいだろうに…あ、そうか。奴は顔に出ないから私もよくわかりませんが(笑)きっと内心嬉しがってるはず^^ぷぷぷ♪

ラカルの悪だくみ(?)はあっさりキャナにバラされちゃいました^^
ね。なんでラカルは嫌がるんだか。イドに任されたんだもの、しっかりやり遂げてもらわなきゃ!(他人事。笑)

嫌な奴、出てきますよ~登場ですよ~!
とことん嫌な奴になってもらおう、この人には^^(にやにや

最新まで追い付いていただきまして、本当にありがとうございます~★
頑張ろう!という気持ちになります♪

chacha #- | URL【2011/08/13 22:04】edit

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