忘れはしない時と唄

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【小説】夢術師の夢 第一章 港町シュンペル 

1



 頬にあたる潮風と温かな陽光。
 耳に届くは海鳥の甲高い鳴き声。船が海を渡る波の音。同乗する人々の賑やかな話し声。

 目をつむったまま、イノは鼻から深く深く空気を吸い込み、塩気たっぷりの息を大きく吐き出した。

 空は抜けるほど高く青い。
 綿帽子のようなふわりとした雲が、愛嬌よろしくところどころに浮んでいる。
 甲板の先頭に立ち、手すりをぎゅっと握ったままイノは天を仰いだ。ボーッと低く汽笛が鳴る。
 それを合図に、客席に座っていた人々がわらわらと甲板へ出てきた。
 賑やかさが一層増した。
 イノは肩から斜めがけをしている布鞄をかけ直し、皆と同様前方に視線を移す。

 眼前に広がる、港町シュンペル。この世界――クリードラでは三番目に大きい港町として有名な場所だ。
 ここからではまだ、イノの手のひらにすっぽりと収まってしまうほどの大きさしか見えない。それでも、白い石造りの建物が町全体に立ち並び、それらが一つの町という創造物を造りだしているのは確かだった。

 なんてステキなところだろう。
 イノは柔らかく真っ白な外衣の上から、胸に手をあて一呼吸した。気持ちが高揚しているのがわかる。海鳥がイノのすぐ傍をかすめていくように飛び去った。

「いやあ、今日はいい天気となりましたなあ」

 イノのすぐ後ろで、低いが陽気そうな声がのんびりと発せられた。イノは胸まで伸びる柔らかくカールした自身の髪を撫で付けながら、ちらと視線を向けた。
 年配と呼ぶには少し早い、色黒の男性がにこやかに立っている。その笑顔は、彼の隣にいた車椅子の老女に向けられていた。

「本当に。昨夜はほんの少しばかり荒れたそうですからねえ。でも、有り難いことに私はその頃夢の中でしたから」
「いや、おんなじですよ。僕も夢の中で一晩中輩と腕相撲してましたわ」

 からからと二人は笑った。イノはうつむいて、栗色の毛先をくるくると指に巻きつける。

「昔なら、きっと大波にのまれて苦しむ夢を見ていたことでしょう」
「ですなあ。もしくは酒を飲みすぎてふらふらに酔っぱらっているか」
「ふふっ。便利な世の中になったものですね」
「いやあ、おっしゃるとおり」

 楽しそうに笑い続ける二人の言葉に、イノはぎゅっと唇を噛み締めた。

 ボーッと、低い汽笛が先ほどよりも長く鳴り響く。
「あ! もう着くよ!」とどこかで子供が叫ぶ。
 イノは濡れた瞳で前に向き直った。

 船着き場では、大勢の人々が色とりどりの旗を掲げて船を歓迎していた。



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カテゴリ: 長編

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コメント

こんにちは!

プロローグ、として、まずはここまで♪
風と雲、そして待ちに待った到着…。
イノのドキドキが伝わってくるようです♪
そして、冒頭にある「夢」というキーワード。

イノが「夢」に何を思うのか、気になりつつ、次に進みたくなる♪
素敵なプロローグです!!

chachaさんの名前を付けるセンス、好きだな~。
苦も無くすんなり受け入れやすいかわいらしさと、世界観にマッチした感じ。
ネーミングって案外悩みますよね~。迷っても、一度つけて文章にしてしまうと、後から変更しにくくなるし。
イノちゃんの冒険が始まるんですね!!
シュンペル♪とんがり屋根を想像しちゃいました。
白い街並み、海岸沿い。
うふふ、続きを楽しみに、また来ます~♪

kazuさんもトーナメントに参加なされたみたいだから♪遊びに行ってきます♪

おおおお!!!

そうそう。
お誕生日おめでとうございます!!!
7月30日!なんと、旦那様の本当の誕生日と同じです♪
気が合うはずだわ♪
(なぜ本当の、がつくかというと、お母さんがお医者様に頼んで8月1日に変更してもらったらしいのです。時々、自慢げに話してくれます…笑)
では、わたくしも、甘~い愛v-207を♪
返品は受けません~v-397(鬼?!

らんらら #- | URL【2011/08/04 12:51】edit

>らんららさん♪

おはようございます~!^^
ひゃ~☆らんららさん、私がとっても幸せになる言葉をまたつらつらと並べるんですからっ!
あ~幸せ~♪今日一日ハッピーですね、こりゃこりゃ☆←

プロローグって、いつも緊張すると同時に力が入る部分でもありますよね^^
私の場合、大抵短いんですが(笑)
物語に入ってもらう入り口みたいなものと考えて、さらっと流してます☆

そうそう、名づけって本当にムズカシイですよね@@;
らんららさんはどうやって決めてます?私は大体、身近にあふれている言葉の中間をとったり、頭とお尻をくっつけたりしてます(笑)
あとは耳に上手く残るか、ですね^^
今度名づけについて語ってみたい~♪みんなどんな風につけているのか聞いてみたいところです(笑)

描写はなかなか思うように出来ていませんが。楽しんでいただけるといいなぁ~^^

そしてそして!おぉ!らんららさんの旦那様と誕生日一緒でしたか☆なんだか嬉しいっ^^
しかも。本当の誕生日がってところがイイのです♪
でも…誕生日を変えてもらうことも出来るのか…すごい(笑)
自慢げに話す旦那様、カワユイですね^^ぷぷぷ☆

あま~い愛i-175しかと受け取りましたっ♪
返せといっても返しませんよ~!ふっふっふ^^
ありがとうございます~♪

chacha #- | URL【2011/08/05 10:19】edit

港町の光景が思い浮かぶようですね。
こういう風情のある港町の風景を書けるのがすごいなあ・・・と思いながら見させて頂いております。
また続きを読ませていただきますね。

LandM #19fPlKYU | URL【2011/12/03 07:37】edit

> LandMさん♪

いつもありがとうございます^^
港町、ここの風景はしっかりと現実にある風景を描写しましたので、そう言っていただけると本当に嬉しいのです♪
私は最初がんばって途中から手を抜き出す傾向がありますので、読み進めていくうちに「あれ…描写少なっ」と落胆させてしまうかもしれませんが…(笑)
今のうちに謝っておきます。すみません。←

またいつでも遊びに来てください^^
ありがとうございます♪

chacha #- | URL【2011/12/04 00:01】edit

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