忘れはしない時と唄

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【小説】警告音 

一人残業をする中、突然の警告音。

これは何の警告なのか……






「じゃあ、クーラーは切っておいたから、あとモニターの電源よろしくな。大村くん」
 夜の十時半を過ぎた頃、管理課内には男二人の姿があった。
 今出ていったのが課長の山根武士。そして入社二年目の大村健だ。
 山根は背が高く、たくましい身体つきをしている。まだ今年三十路を迎えたばかりだったか。なかなか授からなかった子供が先月生まれたらしく、最近にしては遅い帰宅となったようだ。
 お疲れ様ですと一声、山根の背にかけると、一人取り残された大村は小太り気味の身体をうーんと大きく伸ばしながら辺りを見回した。

 パーテーションのみで仕切られた各々の課。同じ階にある営業フロアではまだ何人か居残っているのだろう。ごく一部分のみ蛍光灯が灯っていた。その先に見える総務課は闇に溶けている。
 大村は管理課内に設置された監視モニターに視線を移した。
 現場はすでに真っ暗で、正面玄関と社員用の玄関、あとは一角の駐車場のみがぼんやりと明かりに照らされ映っていた。
 そういえば今夜、現場は二交代じゃなかったなと大村は胸の内で再確認した。上司が今朝の朝礼で言っていたのだ。今日は唯一、二交代制をとっていた機械が故障した為夜勤は休みだと。
 そうなれば、当然その後工程の仕上課や業務課は早々と帰宅してしまう。今はちょうど仕事も落ち着いている時期だ。印刷業界というのは、盆前になれば仕事量がぐっと減ることを去年大村は身をもって実感していた。

 凝った肩に手を添えぐるぐると回していると、「ピーーッ!!」と突然警告音が課内に鳴り響き、大村は勢いよく飛び上がった。
 音の発生源を探るべくあちらこちらに視線を巡らすと、どうも先ほど見やった監視モニターから発されているらしい。
 長細い机に二台並んで置かれた十六インチのモニターには、一台につき九つの映像が映し出されている。随所に設置された監視カメラの映像だ。
 それが一台、正面から見て左側のモニターの中央に赤い帯が左右へ走り、その帯に「error」という文字が白く浮かび上がっていた。そうして、一つの映像が大きく映し出されていたのだ。
 大村は不審に思い、ゆっくりとモニターに近づいてみる。
 何があったのだろうか。これは三階の仕上課か?
 三階仕上課――その言葉がまるでキーワードであったかのように、大村の脳裏に一つの憶測が浮かび上がる。
いわゆる、「いわくつき」な場所だ。
 よく入社一年目の時は様々な噂話を聞き、夜遅くまで居残らないよう気をつけていたほどだった。
 ある者は、断裁機の向こう側から顔が覗いていたと言い。
 ある者は、誰も居ないはずの製品置き場奥から声が聞こえたと言った。
 座って作業していると、視界の端に足が見えた為顔を上げたが誰もいなかった、というのもあった。
 それも踏まえてかどうかは不明が、三階仕上課のみ、つい先週まで監視カメラが設置されていなかったのだ。上司は予算の関係で……と口を濁してはいたが、それも本心かどうかわからない。
 設置された理由は一つ。個人情報保護法の為だ。先月受けた審査員に指摘されたようだった。「これでは外部から不審者が侵入してきても判らないですね」と。
 余計なことを……大村は一人ぼやく。
 おそるおそるモニターの傍らに立つと、「error」の文字を消すべく一つのボタンを押した。
 クリアになったその映像の左上に番号が表示される。やはり、三階仕上課のようだ。

 ふっと。真っ暗な映像で何かが動いた。
 瞬間、大村は大きく心臓が脈打ったのを感じた。
 首筋の毛が逆立ち、喉が渇く。
 警鐘が小さく、だが徐々に大きく大きく鳴り響く。
 まさかと思い、大村は額から流れた汗を手で拭うと、空唾を何度も飲み込んだ。
 そうして、どこからか吹き込む冷たい風を背中に感じた。
 クーラーの風だろうか。それにしても寒い。

 はたと、違和感を覚えた。
 クーラーの風、だと? そんなまさか。
  . . . . . .. ..
 課長が切って帰ったではないか!

 その答えに辿り着いた瞬間、闇に包まれた映像が一変。明るく光る一室を映し出した。
 規則正しく並ぶデスク。その上には煩雑に置かれた資料の山。パソコン。整理棚。その中に、一人の人物がこちらに向かって立っている。
 視線はその人物の手前に並ぶモニターに落とされているため、顔の判別が難しいが。
 思考を巡らすより先に、答えが脳内に躍り出た。
 これは、俺だ。

 この一室に監視カメラなど設置はしていない。ばっと顔を上げると、画面に映る人物も同じ行動をした。
 どういうことだ? どうなっているんだ?
 気味が悪いこの映像を消してしまおうとボタンに指をかけた瞬間。大村は映像の異変に気がついた。

 画面の左上、ここ管理課の入り口となるパーテーションの間から、闇の塊のようなものがずるりずるりと入ってきている。
 それは人のような形をしており、黒い何かがもぞもぞと動いているようにも見える。
 確かなことは、今、まさにこの後ろまで迫ってきているということだ。

 もはや身体は言うことをきかず、声を出すことはおろか、息をすることすら困難になった。
 振り返ることも出来ず、ただただ大村は目を見開いたまま画面を見つめていた。
 背後からは、今まで耳にしたことのない音と声が聞こえてくる。

 ずる、ずる……

 うぅぅ……ぅ……

 大村は動けなかった。



-了-
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カテゴリ: ショート

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コメント

ひぃっ…!!

chachaさんこんにちは!
久しぶりのchachaさんの作品嬉しいです♪
まずはSS!そしてホラーの文字に惹かれて読んで、ぞぞぞわ~っと今も鳥肌が立ちまくりです><;
ここで終わりというのがまた…!!
うちのバイト先にも監視モニターがあるのでちょっと見るのが怖くなりそうです(笑)

かいり #H6hNXAII | URL【2011/06/02 18:47】edit

>かいりさん♪

お久しぶりです~本当に^^
またこうやって交流出来て嬉しいっ♪みなさん、もう活動停止している方ばかりだったので…辞めてしまった人もいるみたいで;;
そんな中、かいりさんはしっかりと続けられてて。戻れる場所があるって嬉しいです^^(笑)

ホラー。名ばかりな作品ですが^^;
でもでも、ぞわ~っときていただいたようで。ふふふ(笑)
ありがとうございます♪
監視モニターが警告音を鳴らしたら、即刻逃げてください(笑)

chacha #- | URL【2011/06/03 00:08】edit

No title

面白いですよね。ホラーは。
私はあまりホラーは好きでないというか、あまり何も感じない性格ではあるんですけどね。
私の職場でもコンセントも電源も切れたラジカセが突然動き始めたり、階段に誰もいないのに足音が聞こえたり、何か重いものがのっかってきたり、まあ色々ある職場ですね。まあ、人が生き死にする場所なのでしょうがないんですけどね。
後輩がそういう現象が出て怖がっているのも慣れましたね。「そんなに怖がっていたら、ウチの職場では仕事できないですよ。」と夜勤のときに言ったりしますね。

面白い作品でしたよ。エラーって文字って何気に怖いですよね。あまりで過ぎると怖いですしね。
どうも、場末でファンタジー小説を書かせていただいている才条 蓮です。とても勉強になりました。また読ませていただきますね。

LandM(才条 蓮) #19fPlKYU | URL【2011/06/07 17:19】edit

>才条 蓮さん♪

初めまして!ご訪問&コメントをありがとうございました^^
このホラー、かなり手ぬるい感満載ではありますが…半分事実、半分フィクションな感じです。
やっぱり、どこの職場でもちょっとした怖い体験談は持ってるんでしょうかね。ふふふ♪
人は何か理解出来ないモノやコトが一番怖いっていいますから…脳が理解できないとかなりのストレスを感じるんだとかで…
なので、安易に「幽霊」などの表記はありません^^

いやほんとうに、感想をありがとうございました☆
またそちらにも一度お礼を込めて伺わせていただきますね♪

chacha #- | URL【2011/06/08 12:51】edit

はじめまして^^;

足跡からお邪魔しました。
追跡、ご迷惑じゃなかったでしょうか?

ホラーという単語に惹かれ、ぽちりとクリックして、読んでみました。
怖かった‥‥後ろを振り向くのが、怖くなるほどに‥‥orz

怖がりだけどホラー好きなので、ゾゾッとしたけど楽しめました。
一時の涼をありがとうございました^^;
拍手を押して帰ります(*´ω`*)ノ

土屋マル #- | URL【2011/06/23 16:40】edit

>土屋マルさん♪

はじめまして^^
ありゃー先越されてしまいました!密かに訪問し、ショートを読んだにも関わらずコメント残さずして去ってしまったこと、ここでお詫びします><

まだまだ、ゾゾ部分が手ぬるい感じではありますが、嬉しいコメントをありがとうございます^^
私も早速そちらに伺いたいと思います♪

ポチともにありがとうございました☆

chacha #- | URL【2011/06/23 21:50】edit

うぉぉうっ

こっ、これは怖いっ!
ぶるぶる……

これは、きますね。
いやもう、ホントきました。

何が怖いって、いわくつきの仕上課のエラーも怖いけど、自分の姿がモニターに映っていて、そのモニター越しに迫り来る闇の塊が見えて!しかもしかも、背後からそれが現実とでもいわんばかりに”音”と”声”が聞こえてくる……!!

目で見る前に、モニター越しで見てしまった恐怖!
それは振り向けない。
大村君も振り向けない。
kazuも振り向けない。

って、半分事実……半分事実!?

なんだか、電源消えてるテレビの画面が怖いです←小心者

体感温度下がりまくりのkazuでした^^
エアコン消そう♪

kazu osino #7av6LuR2 | URL【2011/08/01 20:47】edit

>kazuさん♪

むふふ♪
大村もkazuさんも、そして私だって振り向けないです!(笑)
いえいえ。半分実話というのはですね。この社内の風景だとか、いわくつきという噂話だとかが実話なわけでして。
実際に見たのではないんですが…(でも、噂は事実あるんですよーぶるぶる

入社して一年目、二年目辺りの時は、大村と同じ心境だったもので^^;そっくり使わせていただきました(笑)

ホラーって難しいんですよね、描写が特に><
ホラー小説を読んで勉強したいところですが、なにぶん怖がりなんでなかなか読めないという…(笑)

それでも。ぶるぶるしていただけたようで♪嬉しかったです^^
ありがとうございました♪

chacha #- | URL【2011/08/02 12:32】edit

ええ~っ、終わりっ???

怖いけど、いや、怖いけどさ、け…結末はどうなったのさっ???
 
ホラー怖い! fateだけど、何と言うか、これはまだ良いかも。
人形とか絡むと怖い。
あと、スプラッタはダメ!
じゃあ、なんで読む?
それは、やはり、怖いモノ見たさであろう!!!

お邪魔いたしました(^^)

fate #- | URL【2011/11/25 14:01】edit

>fateさん♪

初めましてこんにちわ^^
このようなホラーともいえぬホラーを(笑)手にとってくださり、ありがとうございます!しかもコメントまで!!
結末を濁すパターンの多い作者なもので、なんとも消化しきれぬもやもや感を抱かせてしまったかもしれませんが…すみません(汗)

しっかり描くと怖いんですよ…怖がりなものですから…(だったらホラーを書くなよ

本当にありがとうございました★嬉しかったのです~^^

chacha #- | URL【2011/11/25 15:02】edit

ひっ、ひとりで残業できなくなってしまったじゃないですか……どうしてくれるのですか。ガクガク。

そう言えば、うちの会社で昨年、怪奇現象が起きました。
従業員全員が同じフロアにいたにも関わらず、電動シャッターが勝手に降りたのです。車を挟んで停止しました。
その付近にはカメラが付いているのですが、誰も映っていませんでした。
それ以来、シャッターが怖くなってしまいました。

ヒロハル #- | URL【2012/01/22 14:46】edit

>ヒロハルさん♪

おはようございます^^
あはは!嬉しいコメントですよ~それは(笑)
ありがとうございます☆

怪奇現象、それかなり怖いじゃないですか…ガクガク@@;
またカメラに何も映ってない方が逆に怖い。
そりゃ不気味なモノが写ってると悲鳴ものですが、何も見えないと想像を駆り立てられるといいますか…怖や怖や…

車だけで何よりです。誰もけが人が出なくて良かったですね^^;
私もシャッターが若干怖くなっちゃいましたよ~(泣)

chacha #- | URL【2012/01/23 09:47】edit

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