忘れはしない時と唄

03« 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16. 17. 18. 19. 20. 21. 22. 23. 24. 25. 26. 27. 28. 29. 30.»05

このページの記事一覧

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

カテゴリ: スポンサー広告

[edit]

TB: --    CM: --    

【小説】一握りの距離 ④ 

何が正しくて、何が間違っているかなんてわからない。

ただ、傍にいたかったから――




「あの子は変わった子でねぇ」
 結局あの後、私を追って捜しにきた祖父母に連れられ、私は家へと戻った。
 夕飯を共に食べながら、祖母は困ったようにため息をつきながら箸を置く。
「たしか、亘ちゃんと同い歳か、いっこ上だったかねぇ。和也くんといってね、いっつも一人で遊んでいるのを見かけるよ」
「あの子は、育った環境が他の子と違うからのぉ」
 祖父も箸を置いて、祖母の言葉を紡いだ。
 私も急いで残りのご飯を口へ放り込むと、麦茶で喉奥へと流し込んでから、訊ねた。
「何が違うの?」
「うん。あの子のご両親はな、あの子が生まれた後すぐに他界しとってな」
「たか……い?」
 うんと背の高い男女を思い浮かべる。自然と天井を見つめていると、祖母が気づいたようだった。
「天国に行ってしまったのよ。あの子を残してね。だから、あの子は今おばあちゃんと二人で暮らしているの」
 天国……
 おばあちゃんと二人で……
「変わった子だけど、亘ちゃん、こっちにいる間は友達になってあげてね。あの子は素直でいい子なのよ」
 傷だらけの身体を片腕で抱き、はにかんで笑う彼――和也の顔を、私は思い出していた。

 それからというもの、私は祖父母の期待に応えるように朝から夕まで和也と共に過ごした。
 相変わらず変な言動はするものの、和也も同じ――といっても私より一つ年上だったが――小学生。この場所ならではの遊びを習って、二人で走り回った。
 虫取りや魚取り、木登りや森の探検――

 そうして五日ほどばかりが過ぎた夕方。
 家に戻ると、私の家族が居間で出迎えてくれたのだ。

「昨日やっと真奈の熱が下がってな。すっかり真奈も元気になったことだし、亘もそろそろ帰りたがっているだろうし……親父とお袋の元気な顔も見たかったからな」
 手に持ったビールをちびちびと飲みながら、父は祖父母に向かって照れ臭そうに笑った。
 母と姉は、真っ黒に日焼けした私を見て笑い転げた。
「寂しくなかった?」と、母が問いかけてきたので、私は全然と答えた。
 実際、一人で寂しく、家族を恋しく想ったのは二日目の朝だけで、あとの日々は本当に楽しかったのだから嘘ではない。強がりでもなかった。
 だが、母はどういう風に受け取ったのか、含み笑いつつ「そう」とだけ言った。
 それだけ日焼けしてるんだもんね、と姉が続いて言った。

 縁側から風が吹き込み、軒下に吊るされた風鈴が涼やかな音を奏でていた。



目次 前へ 次へ
スポンサーサイト

カテゴリ: 短編

[edit]

TB: 0    CM: 0   

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://chachanoblog.blog59.fc2.com/tb.php/18-8627467e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。